#113:ゴート邸合宿棟、アリゼ居室

 その後、最初に案内をしてくれた無愛想な衛兵に紹介状を渡して、ゴート邸とは別棟の寮として使っている建物——この方が、ゴート邸よりも大きい建物だったりするのだが——の一室をアリゼはあてがわれた。荷物をほどき、ほっと一息をつく。
「いやいや、大成功」
 中庭で『見所のある若者達』が一生懸命ゴートの恩に報いるべく汗を流して修行に明け暮れている様を、窓枠に肘をつきながらお気楽に見る。
 そして、まだ整理してない荷物の中に売り物のスカーフがいくつもあるのを思い出し、脳裏に件の野菜売りの顔を浮べてアリゼはさすがに苦笑した。
「みんなビックリするだろうな、俺が帝都にいるなんていったらさ。しかも城壁の内側にだよ」
 窓の外、丘の上に見えるのは紛う事なき王城イリオン城である。
「一国一城の居候、なんてね」
 そう言った後、アリゼはうははと愉快げに肩を揺らした。
「ふざけてるなあ〜、我ながら」

 ひとりごちながら、一雨来そうな暗雲をアリゼは上機嫌に眺めたのだった。

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