#122:カリテア近郊、山中(四)

 それを見て、すかさず表情を引き締めてジンはマックの横に立つ。
 結果的にマックとジンが前衛で、メイミィとテルプシコルが後衛という陣形になった。
 人数的に見て、圧倒的に不利なのにもかかわらず。余程自分の腕に自信があるものか、オデットはなおも涼しい顔で対峙している。
「たァ言っても、ヨ」
 腰に手を当て、オーラもまとわずに。マックは辛気くさい顔でオデットと向かい合った。
「どうにも……女は殴りたくねェんだよなあ」
 この期に及んで、と。
 少しくあきれ顔になるオデットだったが。ややあって、表情を引き締めた。
「なら、何もしないまま倒れていればいいさ」
 グッと、拳を握りしめるオデットとその様子を困ったように見るマックの間に
「じゃ、僕が行くよ。任せておいて」
 タッと、ステップの音を響かせてジンが割り込んだ。
「おいおい、ジン……」
 やる気十分のジンをマックは目を丸くして見る。
 そして、オデットは嬉しげに目を細めてジンを見た。
「男の子だねぇ……後ろの子は同じ顔だけど、妹かい?」
「そ、そうだけど……」
 それは、まるで世間話のような。
 敵として対峙している自分に向かって余裕綽々な口調で話しかけてくるオデットに、ジンは戸惑いの表情を見せる。
 そして、オデットは腰のホルスターに悠然と手をやり
「じゃあ、お兄ちゃん。アタシから妹と姫様を守ってみせな」
 と、一挙動でホルスターから鞭を抜きはなった。
 オデットが得物を持っていることに驚いたジンの動きが止まる。
 そんなジンを少し楽しげに見ながら、オデットはマスク越しに鞭の柄に向かって、ふうっと息を吹きかけた。その瞬間、鞭全体がオーラの光で淡く輝く。
 しばし、呆然とそれを見ていたジンだったが、鞭の存在に気圧された自分に活を入れるように、気合いを入れて叫んだ。
「テルプシコルとメイミィは、僕が守る!」
 構えを取り、オデットをキッと睨み付ける。

 そして、戦いが始まった。
 それはジンにとって、絶望的な戦いだった。

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