#126:カリテア近郊、山中(八)

「……な!?」
 オーラをまとい言魂とともに振るわれた鞭は、文字通り岩をも砕く威力がある。
 それを素手ではじき飛ばすという、常識ではあり得ないディフェンスに瞠目したオデットに向かい、マックは明らかに楽しげな表情で不敵に笑った。
「雑になってきたぞ。丁寧に来な」
 それは、先生が生徒に指導するような口調だった。
「この……!!」
 怒りに髪を逆立て、身を震わせながら。
 オデットは、自身の体力が消耗することも厭わずオーラを厚く身にまとう。
 それは瞬間的に沸騰したかのような光の塊となって、オデットの鞭に集った。
 そこまで来てなお、微動だにせずに不敵な笑みを浮かべたまま突っ立っているマックにオデットは腕を振り上げ、身体をいっぱいに捩り
「吹き飛びな……『プラックエクスタシー!』」
 渾身の力とオーラを込めて、この上なく強力な一撃をマックに見舞った。
 今までの攻撃とは比べものにならないほどの、速度と重さ……そして威力がこもった鞭の一撃——受けきれないから避けよう、と思ってもどうにもならない勢いの攻撃を見て、なおも余裕の表情を見せるマックは全身をオーラの輝きで包み込んだ。
「『ガッツクライム!』」
 マックが言魂を紡ぎ上げるのと、オデットの鞭が当たるのがほぼ同時だった。
 オデットの体力まで攻撃力につぎ込んだその一撃はすさまじく。攻撃の余波で地面を深々と抉り、はじけ飛ぶように舞い上がった土煙がマックの姿を隠した。
 オデットはマックに自分の持つ最大の技が直撃したことを確信した。
 地面を打つ直前に、鞭がマックの皮膚を、肉をはじき飛ばした手応えを感じて。
(これは耐えきれないだろうねぇ……)
 と、目を閉じて恍惚の表情を浮かべる。
 そして、オデットはゆっくりと目を開け……
「なんだって!?」 
 我が目を疑った。
 そこには——微動だにせずガードを固めて立っているマックの姿があった。
 吹き飛ぶどころか、その場で立っているマックをオデットは追撃することも忘れ、ただただ呆然とした表情で見た。
「こんなもんじゃ、吹き飛ばねェぜ」
 マックは言いながらニヤリと笑う。
「下がったら守れねェ——からな」
 くっ……と唇をかんでオデットはマックを睨み付ける。
 体力までオーラに換えてまで大量のオーラを乗せて最大の攻撃技を放った結果——正直、肩で息をしたいほどの消耗をしてしまっていた。
 ただ、当のマックも見るからにダメージを受けてボロボロでもう一押しすれば何とかなるのではないかと考え、オデットは鞭を振りかぶる。

「もう、いいかげんにして!」

 あまりにマックがボロボロになっているのを見て、我慢ができなくなったのか。
 マックの横まで一気に走り寄ったメイミィは瞬時にオーラで猫耳姿に姿を変え
「『フレッシュメロディ!』」
 と、言魂を紡いでオーラの塊をオデットに叩きつけた。

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