#127:カリテア近郊、山中(九)

 突然のことにガードも間に合わず。メイミィが放ったオーラの塊をもろに喰らったオデットは倒れこそしないものの、派手によろけてしまう。
 体制を立て直そうとしながら、オデットはキッとメイミィを睨み付ける。
 そこに……

「調子に乗るな、下郎!」

 怒り心頭——と言った形相で。
 『後ろから技をかけてくれ』と言うマックの言葉をまるっと無視して、マックの前に走り込んだテルプシコルはオデットを睨み付けて言魂を紡ぎ上げた。
「『ブレス!』」
 マック以上のオーラの圧力に、オデットは反射的に腕を上げてガードを固める。だが、爆発的なオーラの圧力にガードはまるで意味をなさず。文字通りの意味で吹き飛ばされた。
 次の瞬間、後ろにある立木にしこたま背中を打ち付ける。その衝撃にしばらく息が出来なくなり、苦しげに咳き込むのがやっとの状態になった。
 足下をよろめかせながら、オデットは数回頭を振る。
(これは、まずいね……二人とも強力な言魂使いじゃないか……)
 『ミュートスの姫様』を含む少女二人は——マックやジンの献身的な対応から推察して——全く戦闘力にならないほどの技しか使えない、と言う自身の判断が根本的に誤っていたことをオデットは我が身をもって認識した。
 すっ、と素早く息を吸い込んで、オデットは一足飛びで間合いの外まで飛び退いた。
 なおも警戒しているテルプシコルとメイミィそしてマックに、オデットは器用に肩をすくめてみせた。
「今日のところは、その坊やに免じて帰ることにするよ」
 鞭をホルスターに納め、マスクを引き下げて、オデットは三人に告げた。
「また、必ずくるからね」
 言い置いて、オデットは最初は退路を塞ぐつもりで確認をしていた、街道につながる『逃げ道』に飛び込むように入っていった。
「こなくていいよ、ばかー!」
 メイミィのこの言葉には特にリアクションもなく。
 オデットは一行の前から姿を消したのだった。

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