#136:ダフニ近郊、山中(三)

 それは圧力すら感じる、強大なオーラだった。
(やはり、只者では——ない!)
 呑み込まれてしまいそうな強大なオーラを目の当たりにしながら、アークは呑まれそうな自分に活を入れるかの如く激しく首を振る。
 そんなアークに向かって、スフィンクスは悠然と構えをとった。
「では……『妙な仮面を付けた男』の闘いぶりをお見せしましょう」
「見せてもらおうか……!」
 ごおっ!!
 するはずのない音が聞こえるような勢いで、アークはオーラを一気に厚く練り上げた。
 出方を伺っているような二人だったが、最初に動いたのはアークだった。
 まったく迷いのない動きで激尺の間合いに踏み込むや、振りかぶった拳にオーラを集める。
「ゆくぞ……『ビートグリップ!』」
 唸りを上げて自分に向かってくるアークの拳を、最初からそうすることが決まっていたかのように華麗に受け流し、スフィンクスは拳を振りかぶった。
「私の番です……『ミスティックアロー!』」
 スフィンクスの手に、弓と矢の形をしたオーラが輝き、一直線にアークの元に飛ぶ。
 アークも当然ガードをしたが、スフィンクスが放ったオーラの矢はクロスさせた腕の隙間をすり抜けてアークの身体を貫いた。
「……くっ!」
 技の可憐な見た目からは想像できないようなダメージに、アークの顔が歪む。
 それを見たスフィンクスは、涼し気な笑みを口元に浮かべた。
「そんなものですか……『熱き氷のアークトゥルス』は?」
 あからさまな挑発だが、それに乗るアークではない。
 だが、やられっぱなしは性に合わないとばかりに、息を深く吸い込んでオーラをまとい直す。
「まだまだ!」
 アークは深く踏み込み、渾身の力で掌底を放った。
 そんな大振りな一撃が来ると思っていなかったスフィンクスのガードを弾いて、強烈な一撃がボディに突き刺さる。
「グッ……!」
 脇腹を押さえながら距離を取ろうとするスフィンクスを逃さぬとばかりに、アークは飛び込むように間合いを詰めた。
(オーラの矢は間合いを詰めれば、使えないはず)
 スフィンクスの背後には大きな樹があり、これ以上下がることはできない。
 その状況を好ましくないと感じたのか、自然に表情が険しくなる。
「いくぞ……!」
 アークは大きく腕を振りかぶり、裂帛の気合を込めて言魂を放った。
「『ハウリングソード!』」
 必殺の間合いだったが、しかし、その瞬間にスフィンクスの口元に涼し気な笑みが浮かぶ。
 嫌な予感が直感としてアークを捉える中、まるで鏡写しのように大きく腕を振りかぶったスフィンクスのオーラが輝きを増した。
「『ミラーインパクト!』」
 バキィ!
 激しい打撃音が響き、数メートル吹き飛んだのは——アークだった。

公開 : (1116文字)

ページトップ