#150:炭焼き小屋の中(六)

「……ブローチ?」
 静かに成り行きを見守っていたメイミィがおずおずと尋ねる。
 小箱の中を見たテルプシコルは、まるで彫像のように固まっていたが、ややあって、小箱の中のブローチを確かめるように手にとって
「——ああ、そうだな」
 と、呟くような小声で答えた。
 そして、ふうっとため息をつく。
「……そうか、そうだな」
 つぶやきながら、小箱にブローチを戻し蓋を閉める。
 蓋に刻まれた名前を、テルプシコルはそっと指でなぞった。
「プレゼント、かな?」
 メイミィのその一言に、すこし苦笑しながら
「かもしれん……な」
 と、寂しげに呟いた後、テルプシコルは立ち上がった。
「長らく面倒をかけた。ありがとう」
 傍らに佇む、スフィンクスとネメアに向かって頭を下げる。
 『神様』に頭を下げられた巫女二人は、慌てて最敬礼を超える角度で頭を下げた。
「面倒など、とんでもございません! やるべきことをしたまでのことです」
「そうですそうです! 巫女神さま、どうかお顔をお上げ下さい!」
 そんな様子を見て、メイミィはつとめてお気楽な口調で言う。
「じゃあ、冷めちゃったからお茶を入れ直すね〜」
 恐縮しながら手伝おうとするスフィンクスとネメアをやんわりと押しとどめつつ、メイミィは手際よくお湯をティーポットに注いだ。

公開 : (544文字)

ページトップ