#151:炭焼き小屋の中(七)

 そして、数分後。
 メイミィが入れ直したお茶を飲みながら
「事態は深刻です……」
 と、スフィンクスは暗い顔で話し始めた。
「帝国はまるで何かにとりつかれたかのように、ミュートス狩りの部隊を増派して送り出し続けています」
「その先でモンスターに襲われ全滅する部隊も少なくないそうです」
 痛ましい顔で付け加えるネメアの言葉に軽く頷き、スフィンクスは軽くため息をつく。
「そこで、アークトゥルス卿に……私たちがミュートス過激派のスパイで、モンスターたちをけしかけて帝国兵を襲っているのではないかなどと、疑われもしていたようですね」
「モンスターをけしかける?」
 意外そう、というかあっけにとられたような表情になるメイミィとテルプシコルの様子を見て、ネメアは苦笑する。
「私は動物が好きで、良くミュートスで動物と遊んだりするんですけど……そこを勘違いされたみたいで」
「あンの野郎、本当に頑固だからな。思い込みが強くて失敗したりするんだよ、昔っから」
 呆れたような口調で言うマックの言葉に、ジンもうんうんと頷いて同意する。
 スフィンクスは神妙な表情で話を続けた。
「それと……これはもう、帝都の街中でも噂になっていますが」
 スフィンクスは、ミュートス狩りの話題の時とは違う種類の暗い顔になる。
「病に臥せっていた皇帝の病状が、いよいよ厳しいとのことです」
 それを聞いたマックは、ずいっとスフィンクスの方に身を乗り出した。
「陛下の? ご病気だと聞いちゃァいたが……」
「はい」
 頷きながら、スフィンクスはマックが『帝国騎士』だったことを改めて思い出した。
 マックは彼にしては珍しく深刻な表情でスフィンクスに尋ねる。
「なんの病気なんだ? もう……治らねェのか?」
「残念ながら、どういう病気かはわかりません。そもそも、病気であることを公表はしていませんから」
 そうか……と、呻くように呟くと
「俺ぁ……東方辺境区の孤児でな。物心付く前から施設で育ったンだ。親の顔どころか名前も知らねェ」
 と、マックは誰にともなく話しはじめた。
「まァ、悪ガキでな。手が付けられねェってンで、精神修行と腕っ節を活かすのとで、ロゴスの道場に通わされた」
 もともと、順序立てて話すのは得意な方ではないものか。
 話の道筋を考えるのに、少し間をおきながらマックは話しを続ける。
「そんな俺を……見所があるって旅の途中で拾ってくれたのがゴートだ」
「ゴート卿ですか?」
 スフィンクスは、それを聞くと意外そうに目を丸くする。
 ネメアも同様の表情で、マックにともスフィンクスにとも取れる感じで言う。
「確かに、ゴート卿の屋敷には若い戦士が大勢いますが……」
「俺が最初のひとりさ」

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