#153:炭焼き小屋の中(九)

「おまたせー!」
 メイミィの明るい声が唐突に響き渡る。
 ワンテンポおいて、なんとも言えぬ良い匂いが部屋中にあふれた。
「お食事、できましたよー」
 ネメアに言われるまでもなく、すでに匂いで全員がその事実を把握していた。
 誰ともなしに片付け始めたテーブルの上に、湯気をたてた皿が何枚も並ぶ。
「こりゃ、うまそうだ」
「おいしそうでしょー」
 そう言って、メイミィは嬉しそうにマックを見た。
「温かいうちに食べたほうが、もっと美味しいですよ」
 そう言って、エプロン姿のネメアがにっこり笑う。
 彼女には少し大きめのサイズだったが、それでも実によく似合っていた。
「では、いただこうか」
 テルプシコルの言葉を合図にするかのように、一同は席につく。
 スフィンクスの横に、エプロンを外したネメアが座りどちらともなく口を開く。

「太陽と大地と海原と私たちを護って下さる巫女神さま……」
「やめてくれ」

 顔を赤くしながら、テルプシコルは二人を制する。
「まあ、目の前にいるんだからいいんじゃないかな?」
 楽しげに笑うジンの言葉に、二人の巫女も苦笑する。
「すみません、習慣になっていまして」
「では、普通に……」
「いっただきま〜す!!」
 メイミィの細かいことをすべてすっ飛ばす勢いの『いただきます』を合図にして、賑やかな夕食が始まった。
 そして、彼女たちが合作で作った夕飯のメニューは……

 ジャガイモとチーズのオムレツ
 塩漬け豚バラ肉のソテー・ポーチドエッグ添え
 野菜たっぷりタコス
 野菜たっぷりスープ
 トマトサラダ

 以上の五品である。
 メインディッシュ群を指さしながら、ネメアが笑う。
「こちらの凝ってる二品はメイミィさんが。タコスはわたしが」
「スープとサラダは合作だよ」
 言いながら、メイミィはざくざくとサラダを取り分けている。
「この豚肉焼いたのはうまいな!」
 豚バラ肉のソテーをひとくち食べたマックが早速舌鼓を打つ。
「本当だな。中はしっとりしてるのに表面はカリッとしている」
「卵が半熟だから、絡めて食べるとまた違う感じだよ」
「やるな、メイミィ」
 皆に絶賛されて、えへへーとくすぐったそうに笑う作者のメイミィの横で、ネメアが面白そうに笑う。
「バラ肉をソテーするときにすごくいい匂いがして……すっかりお腹すいちゃいました」
「焼いてる時に出た油をすくって上からかける時でしょ? アレはやばいよねー」
 スフィンクスはオムレツに手を付け、そしてうんうんと頷いた。
「オムレツも美味しいですよ。優しい味で」
「よかった——卵がかぶったの、バレてないや」

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