#158:炭焼き小屋〜夜(三)

 ——そして。
 どれくらいの時間がたったものか。
 テルプシコルはようやく落ち着きを見せて、ふうっと、軽く息を吐いてみせた。
「すまなかったな、ジン」
 ジンは名を呼ばれて振り返る。
 すっかり赤くなった目で、テルプシコルがこちらを見ていた。
「テルプシコル……」
 ぐっと、拳を握り込み。
 ジンもまっすぐテルプシコルを見た。

「僕が……君のことを守るよ」

 その言葉を聞いてテルプシコルは目を見開いた。
 ややあって、ため息をつきながら
「未熟者が余計な気を回すな。自分の身くらい、自分で守る」
 いつもの口調で、ジンに言った。
「え、あ……いや……」
 あまりに真っ向から否定されて詰まっちゃったジンは赤面して黙り込む。
 そんなジンを見たテルプシコルは
「……ん」
 と、軽くうつむくように頷いて。
 赤く泣き腫らした目を細め、柔らかく微笑んだ。
「心配をかけたな、ジン」
 寂しさと諦めと。
 そして、うれしさがないまぜになったような。
 そんな微笑みだった。

 ずきん。
 胸が痛んだ。
 (強く、ならなきゃ)
 ジンはぎゅうっと拳を握りしめた。

 そんなジンの背中を、ぽんと叩き。テルプシコルは歩き出した。
「さあ、そろそろ戻るとしようか」
 うん、と頷いて後に続くジンはなんとなしに、夜空を見上げた。

 いつの間にやら。
 頭上の雲はきれいに消え去って。
 無数の星が、冴え冴えと二人を見下ろしていた。

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