#16:神殿前の泉(四)

 そして、約十分が経過した。
「うー……」
「むー……」
 ありていに申し上げて、膠着状態である。
 考えてみると、ついさっき会ったばかりの二人である。悪口のネタもあまり豊富ではなく。ここまでくると、ただ無言のまま額をつきあわせるような勢いでにらみ合いが続いていた。
「ううー……」
「むむー……」
 ひょっとして、作者がいい加減に行数を稼いでいるのではないかと疑惑を招きそうな感じで短く唸っている二人は至近距離でにらみ合い、じろっとお互いの顔を見る。
 そして、二人して同じタイミングですうっと大きく息を吸い込み

『ばかー!』

 と。それは見事にハモったのだった。
 言葉の内容はともあれ、見事なユニゾンを形成していた。

【ごおん……】

 いきなり。
 神殿の方から、何か重いものが動いたような音が響いた。
 一同、思わず身構えたが。その後は、何事も無かったかのように静まりかえる。
「……何の音や?」
 一挙動で背中の巨大なブーメランを抜いて構えたクニスカがオーラをまとったままあたりを見渡した。が、動くものは特に見当たらず、何かが現れたような様子もない。
 その横で同じくオーラをまとって警戒したアークも鋭い視線を周囲に走らせて異変を探るが、特に異変を見つけることはできなかった。
「神殿の方から、か?」
 そのアークの言葉に皆は一斉に神殿を見るが、今までと変わった様子は少なくとも泉のほとりからは確認できない。そこでクニスカがブーメランで神殿を指しながらアークに言った。
「とりあえず、見に行ってみるワ」
 遺跡探索のエキスパートであるクニスカだ。立ち回り方は心得ているだろうと、アークは頷いて了承した。それを受け、ブーメランを片手に進もうとするクニスカにジンは駆け寄った。
「僕も行くよ」
 グラブをはめ、オーラをまとうジン。そんなジンに向かってクニスカが口を開くより早く、メイミィもジンの横にたたたっと駆け寄り、はいっとばかりに元気よく手を上げる。
「わたしも行く!」
 クニスカは自分の脇に立つちびっ子二人——いや、年齢は十四歳らしいのだが——を見て
「あのな……危ないからウチだけで見に行こかちうとンのに……」
 意味ないやんケ、と思わずため息をつく。
 そして、やりとりを聞いていたアークは彼にしては珍しく、面白そうに笑いながら言った。
「では、俺も行こう」
「アンタもかい!?」
 すかさずツッコミを入れたクニスカだったが、しばし頭を抱えて考えると
「こぉなったら、みんなまとめて面倒みたるワイ!」
 と、男っぽく言い放ち、巨大なブーメランをガッと勢いよく肩に担ぎ上げた。
 まだ幼さが残る顔を引き締めてクニスカの顔を見上げる二人。その後ろで隙を見せずに周囲を警戒するアーク。クニスカはそんな様子を確認して
「よし、ついてきィや」
 と、悠然と歩き出す。ジンはオーラをまといながら、クニスカの後をついて行くのだった。

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