#167:炭焼き小屋、居間(八)

「はいはい、おちついてー」

 立場逆転。
 もう、なんかパニックな感じのテルプシコルに、メイミィは余裕の表情で微笑んだ。

「よし、じゃあ……テルちゃんの気持ちを確かめてみよう!」

 メイミィはそう言うと、ぐいっと額がふれあわんばかりにテルプシコルに顔を寄せる。
「な、なんだ……?」
 すごく、嫌な予感。
 テルプシコルは、脂汗を流しながら訊ねた。

 そして。
 それはそれは、すごく良い笑顔で。
 メイミィは、言った。

「ほら、私ジンと同じ顔でしょ? 私をジンと思ってみて」

 テルプシコルはそう言われて、思わずメイミィを見た。
 額どころか、唇が触れあわんばかりの距離に。
 メイミィが、いや——ジンと同じ顔があった。

 ——ぽん!
「わ、いきなり真っ赤になったあ!!」

 いきおい、大きくなるメイミィの驚きの声。
 傍観者2人も驚くような、それは見事なテルプシコルの赤面だった。

「い、いや……これは……」

 テルプシコルは慌てて弁解の余地を探しはじめた。
 だがしかし。
 そんな努力を無にするように。
 メイミィはテルプシコルの肩に手を置き、瞳をまっすぐに見つめこう言った。

「『僕はジンだ。テルプシコル、好きだよ』」
「み、妙な声真似をするなあぁぁーっ!!」

 突き放そうとするテルプシコルだった。
 が、それは遅きに失する行動だった。

「おりゃー!!」

 それはそれは楽しげに。
 メイミィは景気よく、テルプシコルをソファに押し倒した。
 ついでに、ぎゅーっと抱きしめてみたりする。

「な!? こ、こら! 離せ!!」
「『僕はジンだ。もう、離さないよ』」
「やかましいぃぃぃーーーっっっ!!!!」

 そこから先はもお。
 滅茶苦茶でごじゃりまするがな。

「こ、こら! いい加減離れろ……み、耳を噛むな! ぅわあ、息をかけるな! ……というか、ドサクサ紛れてドコに手を入れているかあぁーっ!?」
「せくしーなのに、ぺったんたん♪」
「妙な歌を歌うなあああぁぁーーーっっ!!!!」

 目の前の状況に、なんか赤面して絶句しているネメアは捨て置き。
 スフィンクスは苦笑しながら、ぽんぽんとメイミィの肩を叩く。

「ま、まあ……そろそろその辺で止めましょう。大変なことになってますよ、メイミィ」

 あら、と。
 言われたメイミィは目の前のテルプシコルが『大変なことになっている』のを見て

「やりすぎちゃったかな?」

 てへ☆
 舌を出して笑った。

「疑問を抱くなっ! やり過ぎに決まっておろうがっ!!」

 とりあえず、外されたブラウスのボタンをかけながら。
 テルプシコルがツッコミを入れる。
「お主が『ジンと同じ顔』などと言うから焦っただけの話だ! 別段、ジンのことなどなんとも思ってはおらぬわ!」
 と。赤面おさまらぬ勢いで、テルプシコルがまくし立てるのを

「ふーん、そうなんだあ〜」
 まるで柳に風と、メイミィは軽く聞き流す。
 そして、一拍の間。
 メイミィはあることに気が付き、またも膝を打つ。
「そういえば……カリオペちゃん!」
「はい?」
「テルちゃんの昔の許嫁の人にそっくりなんだっけ?」

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