#169:炭焼き小屋、居間(十)

 そんなやりとりを見ながら。
 当のスフィンクス、はあっとため息をついた。
「やはり、私はその殿方に似ているのですね」
「まあ、そうだな」
 テルプシコルのその答えに、スフィンクスは少し考える感じになる。
「いや……別段、男装をしているつもりも無いのですけれど。仮面を付けていたこともあるのかもしれませんが、私を男性だと思った方はかなり多くて」
 ちょっと情けなさげな表情で、スフィンクスは下を向いた。
「なんでしょう、そんなに仕草が男性っぽいのでしょうか?」
「男性っぽい、ねぇ……」
 スフィンクスの胸を見ながら。
 首をかしげつつ、メイミィは思案に暮れる。
「そうですねぇ……」
 スフィンクスの胸を見ながら。
 ネメアは、うーんと考えた。
「そう言うことも、無い……気もするが……」
 スフィンクスの胸を見ながら。
 言葉を選ぶように呟き、テルプシコルは腕を組む。
「あの……ですね」
 ちょっと頬を赤く染めながら。
 スフィンクスは、そのぶしつけな三人に言った。
「別に胸だけが判断の基準では無いかと。全体的な物腰とか、顔立ちとか……色々あるではありませんか」
 あははーと。
 お気楽に笑いながら、メイミィはそれに答える。
「こうやって見ると、女の子なんだけどね。やっぱり、戦士だぞって気を張ってると男の子っぽくなるんじゃない?」
 そうでしょうか……と、なんかちょっと落ち込んじゃったスフィンクスに、ネメアは必死にフォローを試みる。
「お姉さまはき、綺麗ですから! だから、そんなに気にしなくても大丈夫です!」
 そして、テルプシコルはスフィンクスの胸から顔に視線を移して話し始める。
「そもそも、自分から男と名乗っていたのか?」
「いえ……最初はごまかすつもりも無く、自分から特にということも無かったのですが」
 ちょっと遠い目。
 スフィンクス。自虐的にふっ、と微笑んだ。
「旅の道中、会った人間全てに男性と勘違いをされまして」
 う……、と。
 テルプシコルは、ちょっと返す言葉に詰まった。
 スフィンクスは、呟くように語り続ける。
「せめて『男性?』とか疑問を投げかけてくれれば、修正のチャンスもあったと思うのですが……」
 なかったんだねぇ、とちょっと気の毒そうにメイミィは笑う。
 スフィンクスは少しあきらめたような表情になりつつも、続きを語った。
「女性で戦士だと悪目立ちするかもしれないと思い、ここは男性で通した方が良いかと思ったのが最初でした」

 ——いや、仮面の方が悪目立ち度高いと思うがな。

 そんな事をおもいつつ、テルプシコルは続きを促した。
 スフィンクスは、やや複雑な表情で胸に手をあてる。
「念のため、胸のふくらみをごまかせる服装にはしてみたのですが……ここまで見事に皆がごまかされると……」
 最後には消え入りそうな声になってしまう。

 ——服装はあんまり関係ないと思うなあ。

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