#173:炭焼き小屋、居間(十四)

 そして、メイミィはニヤリと笑ってスフィンクスに向き直る。
「それで、ゴートさんはカリオペちゃんのことどう思ってるの?」
「それは……」
 割と重い沈黙。
 メイミィは、おそるおそる聞いてみる。
「もしかして……結婚してる人?」
「いえ、独身なのですが……」

 ——じゃあ、ホモ? それとも、ロリコン?

 さらなる沈黙を受け、帝国皇帝近衛騎士に対してずいぶんな可能性を胸中列挙してみせる。
 ややあって、スフィンクスはゆっくりと重い口調で語りだした。

「……たぶん、私のことを男だと思っているかと」

 ——あら〜……そう言えば、そうだったね〜。

 そんな感じでメイミィは、気の利いたことも言えずに苦笑する。
 当のスフィンクスもちょっと自嘲げに話し続ける。
「何というのでしょう。『どう思っているか』という以前の問題で。スタート地点にも立てていないような状況と言うか……」
「まあ、恋の前提条件としては真っ先にクリアしておかねばいけないポイントではあるな」
 困ったものだとテルプシコルは腕を組む。
 そして、なんか余計なこと聞いちゃったメイミィであったが、明るく話をまとめてみる。

「なるほどねー。カリオペちゃんはオジサン好きかあ」
「い、いやそんな……」

 ——オジサンが好きと言うより、ゴート卿が……

 こんな言葉を飲み込んでスフィンクスは、半ば無意識のうちに膝の上にたたずむネメアの前髪をくるくると指で弄ったりしていた。
 膝枕をしてもらった上に、そんなことまでされたネメアは、もおたまらなく至福な表情を浮かべている。
 しあわせいっぱい、ゆめいっぱい。

 そして。
 そんなネメアを見ながら、メイミィが言った。

「で、クレイオちゃんは……カリオペちゃんが好き、と」
「……ふえええ〜!?」

 一瞬で顔が真っ赤になっちゃった、ネメアが妙な声を上げる。
 あまりの考察結果に、スフィンクスもちょっと硬直した。

「それはどういうことですか?」
「……いや、なんか見るからに」

 スフィンクスの疑問に、苦笑ぎみに答えるメイミィであった。
 疑惑の渦中にいるネメアはあわてて身を起こす。

「そ、そそそそそんな! 好きって、その……好きなんですけど、そのお!」

 なかなか言葉が見つからない。
 そんなテンパっているネメアを見て

 ——からかって良いものか?

 寸暇迷いを見せたテルプシコルだったが、ちょっと考えて。

 ——まあ、良いか。

 アッサリと結論を出し、からかうことにした。

「まあ、愛の形は一つではない。別に女が女を好きだからとて、責められるものでもないぞ」
「み、巫女神さままでー!?」

 とんだ神様もあったもんである。

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