#178:炭焼き小屋、食堂(一)

「よし、完成っ!!」

 マックが高らかに宣言して、本日の夕食
『マック特製、ベジタブルチキンカレー』
 が、出来上がった。
 カボチャ、にんじん、トマト、アスパラ、レンコン、ジャガイモ……色とりどりの野菜がたっぷり入り、ダメ押しに一羽分の鶏肉が煮込まれている。
 かぼちゃとじゃがいも、レンコンはひとくちプラスアルファの大きさに切ってあり、皿によそうと
『野菜ゴロゴロ』
 と言うイメージが目でも存分に味わえる寸法だった。

「これは美味そうだな」
「はやくたべよー!」
 テルプシコルとメイミィがカレー皿を前に『おあずけ』状態になっている。
 スフィンクスとネメアは、思いのほか本格的な『マックのカレー』に目を丸くしている。
「すごいですね」
「今日はジンが手伝ってくれたからな。いつもより凝ったヤツを作れたぜ」
「なるほどー」
「いや、料理したのはマックだから……」
 と、ジンが言っているうちに、全員に皿が行き渡った。

「皆、揃ったな?」
「では、いただきまーっす!!」

 もはや我慢の限界とばかりにメイミィが宣言して。
 『カレーの日』が始まった。

「おいしいー!」
 まずは野菜のない部分を一口食べて、メイミィは幸せそうな表情になる。
 スフィンクスも思わず笑顔をみせた。
「これは食が進みますね」
 カレーのスパイスは、身体に良い成分が沢山入っている。
 コリアンダーやナツメグなど、食欲増進の効果があるものも入っており、疲れた時でもしっかり食べることができるとマックは主張していた。
「どうだ、ちびっ子! 米は炊いたほうが美味いだろ?」
 そのマックは、ルーのかかってない部分の米をスプーンで掬ってネメアに見せている。
 ネメアも一口食べて、大きく頷いた。
「ですね! つやつやでもちもちして……おいしいです!」
 壺と言えば、はどこへやら。
 ネメアも満面の笑顔である。
「鶏肉がスプーンで切れるほどに柔らかく煮込んであるのだな」
 テルプシコルはじっくりと煮こまれた鶏肉に舌鼓を打っていた。
 時間をかけて煮込んだおかげで、パサパサにならずに旨味を保ったまま柔らかく仕上がっている。
 マックは肋骨の部分を指でつまみながら
「骨はダシを取るので入れっぱなしだけど、骨ぎしの肉は美味いからな。良かったら取り分けるぜ」
 と、すこしお行儀悪く手づかみで骨にかぶりついていた。
 その横ではメイミィとジンの双子コンビが、ごろごろ入っている野菜を食べて
「かぼちゃ、ほくほくして美味しい」
「レンコンもいいよね」
 と、至極ご満悦な感じである。
 アスパラもシャキシャキ感がギリギリ保たれた感じで、ホクホクした野菜とシャキシャキした野菜の両方が楽しめる感じになっている。

 そうして。
 皆でわいわいと騒ぎながら、カレーを完食した。
 食後のコーヒーを飲みながら、ジンはテルプシコルの横に座った。
「……どうだった?」
「ああ、うまかった」
 笑顔で答えるテルプシコルを見て、安心したような微笑みをジンはみせた。
「よかった」
 その表情と口調に感じるところがあったものか。
 テルプシコルはなんともいい笑顔をジンに向けた。
「すっかり、元気になった。ありがとう、ジン」
「いや……うん。本当によかったよ」
 そう言って、ジンは照れくさそうにコーヒーを飲む。

 カップから口を離し、顔を上げたジンの目線の先にマックが座っていた。
 マックはジンと目が合うと、ニヤリと笑ってサム・アップしてみせる。
 ジンも控えめに、でも笑顔でサム・アップして答えたのだった。

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