#196:キリオス街道 - ⅱ

「実は、つい昨日まで一緒にいたのですよ」
「一緒って……テルプシコルと?」
 思いがけない告白に、クニスカは驚きの表情になる。
 正直、城内で初めて見かけた時から怪しさを感じていて、それがミュートスのスパイと言われたならば『なるほど』と頷けただろう。
 だが、スパイならば馬鹿正直に『伝説のミュートスに会いました』などとは言わないはずである。
 何を言い出すのか困惑している風のクニスカを見て、スフィンクスは苦笑を漏らす。
「こういうことをこまめに話しておかないと、怪しい輩という扱いをされてしまうので……」
 そう前置きをしてから、スフィンクスはアークとの一件を話した。
 最初はきょとんとしていたクニスカの表情が驚きに変わり、やがて理解の色になる。
 そして最終的に
「アークはそういうトコ真面目やけど……しゃーないなあ」
 と、呆れたような諦めたような苦笑を浮かべた。
「アークに会ったら、スフィンクス殿が困ってはったテ言うときますワ」
「よろしくお願いします」
 こちらも少し苦笑気味に頭をさげるスフィンクスに、クニスカは今度は興味津々に向き直る。
「それで、テルプシコルと会ってどうやったンですか?」
 わりと漠然とした問いに対しての答え——というか答え方を模索している風のスフィンクスだったが、ややあってクニスカに向かってにっこりとほほえんでみせる。
「はい、敵ではないとわかっていただけました」
 さすがに、自らの正体の言及は避けてスフィンクスは話す。
 そして、それを受けたクニスカは、ちょっと考えた後で
「実はですナ……」
 と、神妙な表情で切りだした。
 スフィンクスもネメアも何事かと姿勢を正す。
「人間がモンスターになって、帝国兵を襲ってる事件が起こってるテ、聞いたことありますか?」
「いえ、初耳です」
「人間がモンスターに……って、どういうことですか?」
 話が読めない風の二人に、クニスカは丁寧に説明を始める。
 特にキマイラの風貌や強さに関しては詳細に語った上で
「ソレを、追ってますねん」
 と、締めくくった。
「追う……?」
 それを聞き、スフィンクスは怪訝な表情をみせる。
 確かに、クニスカは音に聞こえた腕利きの帝国騎士である。
 だからといって、供の一人も付けずにそれほど危険なモンスター退治を任されるというのはさすがに腑に落ちない。
 だが、クニスカははあっと芝居じみたため息をついてこう付け加える。
「ゴート卿は『出来れば捕まえろ』言うテはるけど……そんなん、無理ですやン?」
 退治を通り越す無茶な指令を聞いて、スフィンクスの目がまんまるになる。
「お話を伺う限り、モンスターと接触して、我が身を守るだけでも大変かと……」
「完全装備のミュートス狩り部隊を、いくつも全滅させてるんですよね……?」
 ネメアにまで言われて、クニスカはいよいよ情けない顔になってはああぁ〜っと力なく息をつく。
「ゴート卿に言うたってください、ホンマ」

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