#200:キリオス街道 - ⅵ

 そして、その間に【ろりっとしたの】は、買い物を完了させていた。
 それはそれは素敵な笑顔で買い物をしていたので
「なんかいいことあったのかい? ははーん……ずいぶんと二枚目な旦那だねぇ。いいねえ!」
 とかオバチャンに散々からかわれながらも
「今晩、がんばるんだよ!」
 と、すごく安くしてもらったりもしたので、ネメアはいたくご満悦である。
「片栗粉はあるし……うん、これでオッケーです!」
「ご苦労様でした」
 スフィンクスはネメアから買い物かごを受取り、自分の荷物に中身をしまった。
 そして、ネメアの荷物——買い物の荷物よりもはるかに軽い——を本人に返して、こちらも上機嫌な笑顔をみせた。
「帝都まであと少しですから。お城に戻ったらあのケーキ屋さんでごちそうしますね」
「はいっ!」
 スフィンクスの柔らかい笑顔を見ながら、ネメアは満面の笑顔で返事をした。
 しあわせいっぱい、ゆめいっぱい——で、あった。

「帝都のお城に行くのでござるか!?」
「え!?」
「きゃあ!?」

 なんの前触れもへったくれもなく。
 スフィンクスのセリフに、突如背後から全力で食いついたユキであった。
 その結果、あっけにとられて絶句しながら自分を見る二人を見て
「あ、いっけないでござる。思わず声に出してしまったでござる」
 ぽかっ、と。
 ユキは自分の頭を叩いた。
「てへっ、でござる」
 最後に舌をぺろっと出すのも忘れない。
 さながら『聖イリオンに舞い降りた、ドジっ子の天使』といったところだろう。

「あ、あの……」
 おそるおそる。
 どうしようか考えあぐねているスフィンクスのかわりに、ネメアがユキに声をかけてみる。
 それを見たユキは
「む、ご無礼をつかまつった」
 と、背筋をビシっと伸ばして二人に向き直った。
「拙者、葦原の国より参ったユキと申すものでござる。武者修行の旅の途中、ロゴスの本山とも言える聖イリオンの帝都に立ち寄りたいと思い、この地まで参った」
 くっ……
 そこまで語ると、何やら口惜しげに唇を噛んでみせる。
「……参ったが、帝都にまるでツテが無く参っていた次第」
 ユキは最初のドジっ子天使はなんだったのかと言いたくなるほどに引き締まった表情で、スフィンクスとネメアに視線を向けた。
「どうか、このユキを帝都まで同行させていただきたく。お願いいたすでござる」
 言い終えて、深々と頭を下げる。
 そして、話を聞き終えたネメアは意外そうな表情をみせた。
「葦原の国……東方国、ですか?」
「この国ではそう呼んでいるようでござるな」
 ユキはそれを聞いてにっこりと笑う。
「いかにも、帝国の東方に広がる大海……その彼方に浮かぶ島こそが、我らが葦原の国でござる」
「そんなに遠くから……」
 スフィンクスやネメアが生まれ育った隠れ里は、大陸西部の若干内陸よりに位置しており、東方こと葦原の国は
「噂では聞いたことがありますが……」
 と、物知りのネメアが感嘆の声を漏らすくらいには遠方のイメージであった。

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