#202:キリオス街道──野営地 - ⅰ

 そして、夜が更けて。
 スフィンクス一行は予定通り街道脇で野営をすることになった。
 ユキは長旅をものともしない健脚っぷりで、あともう少しがんばればロクリスという地点まで歩みを進めることができた。
「この調子ならば、明日はロクリスに宿泊できそうですね」
「それは重畳至極でござる」
 いくら野宿に慣れていると言っても、獣や夜盗を警戒せずに休める宿屋はありがたい。
 特に体力があると言えないネメアのような同行者がいる場合にはなおさらである。
 もっとも。
 修行の旅であるならば、あえて宿をとらないと言う者も珍しくなく。
 アークやマックなどはまさにその種類の旅人であった。

「お夕飯、できましたよー」
「待ってましたでござる!」

 ネメアの明るい声に反応して、ユキはテーブル代わりにした切り株の上に皿を並べだす。
 調理中、スフィンクスとずっと話し込んでいたところを見るに、ユキの料理の腕は推して知るべしであろう。
「ユキは食べる専門でござるゆえ、申し訳ござらぬ」
「いえいえー! たくさん召し上がってくださいねー!」
 つまり、食べる専門の数が倍になったというわけだが、嫌な顔ひとつ見せずにネメアは料理を盛り付ける。
 そして、一同が席につくとスフィンクスとネメアは胸の前で手を組んで祈りを捧げる。

『太陽と大地と海原と私たちを護って下さる巫女神さま、今日もありがとうございました』

 二人が祈りを終えてふと見ると、ユキも無言で手を合わせて祈っている。
 その視線に気がついたのか、ユキは屈託のない笑顔をみせた。
「ユキはご先祖様に、今日も一日を無事に終えられた感謝のご挨拶をしているのでござる」
「なるほど」
 三人ともに夕食前の祈りを終え、食卓についた。
 となれば、やることはただひとつである。

「では、いただきましょう」
「はい、いただきます」
「で、ござるっ!」

 フォークとナイフを手に、ネメア作の夕飯に舌鼓を打つ。
 本日のメニューはポークピカタとじゃがいも餅、あと簡単なサラダであった。

「これは美味しいものでござるなあ!」
 味や食感の想像がつかなかったのだろう。
 真っ先にいも餅に手を付けたユキが感嘆の声を上げる。
「なんで、じゃがいもがこんなにもちもちしているのでござるか?」
 ぱっと見、マッシュポテトを丸めて焼いただけに見えなくもないが、食感はまさに『餅』である。
「ゆでたお芋を潰して片栗粉と少しの牛乳で練ったものを焼いたんですよ。簡単ですけど、美味しいですよね」
 レシピ的には片栗粉を小麦粉にすればニョッキになる感じである。
 原材料はほぼじゃがいもなので、ボリュームのある付け合せとなり、肉類にも実によく合った。

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