#205:帝都辺境、とある村 - ⅱ

 メキメキメキ!
「こらぁ……貧乏くじや」
 下生えと言うには随分と茎が太い草に足をとられながら、クニスカはボヤいた。
 村の老人に聞いた隠れ里へ向かう獣道を進んでいるはずだが、ときとして『藪を漕ぐ』という行為を強いられるほどの草深い道を相当な距離進んでいる。
「さっきのアレ、目印とちゃうかったンかな?」
 地図——と呼ぶにはあまりにお粗末なメモ紙を見なおして、先に進む。
 そんなことを二時間ちょっと続け、さすがのクニスカもだいぶ自分の居場所に自信がなくなったころ
「ココか?」
 クニスカは【隠れ里の入り口】を見つけることができた。
(コレ、首尾よくキマイラを捕まえたとして——帰れるンかな?)
 ここにくるまでは、村の老人から聞き取った地図を見ながら進んできた。
 無論、理屈ではその逆を行けば帰ることができるはずだ。
 はずだが……振り返ると草と木しか見えず、地図に書いてある
『曲がり角の目印』
 を探し当てる自信はあまりなかった。
(最悪……どこかに抜けるまでまっすぐ歩けばエェか)
 山で道に迷って遭難する人の話では
『とりあえず、下れば麓に着くだろう』
 と歩いて行き、完全に登山道をロストするケースが多いという。
 考え方としては、まさにそれの樹海バージョンといえる。
(まあ、帰りは帰るときに考えればエェわ)
 のんきに切り替えて、村の中へと入ろうとしたクニスカの歩みがピタっと止まる。

「——ミュートスの隠れ里に、騎士がノコノコ入っていって無事に済むンかいな?」

 そもそも、なぜ身を隠しているのかというと、【帝国の手の者に見つからぬため】である。
 クニスカの背負っているブーメランには隠しようがないくらいに鮮やかに、帝国騎士の紋章が刻み込まれており、どう考えても帝国の関係者であることをごまかせないと思われた。
(ミュートスは戦いは得意やないって言うけど……アテにならへんし)
 確かに、ミュートスは戦いのための言魂ではない。ただ、戦うために使った時の強さはテルプシコルを見れば明らかであった。
 クニスカは大いに悩むが、どちらにしてもここまでやってきたらもはや進むしか道がなかった。
「やっぱ、貧乏くじやンかいさ……」
 そう呟きながら、クニスカは村の中へと入っていった。

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