#206:帝都辺境、滅ぼされた隠れ里 - ⅰ

 結論から言うと。
 危惧していた【里のミュートスたちから襲撃される】と言う事態にはならなかった。

「うわ、最悪や……」

 里のいたるところに散乱していたのは、帝国兵たちの死体だった。
 惨殺死体が散乱する里の中を、クニスカはなんともいたたまれない表情で歩く。
 まだ、日が経っていないのか死体は腐乱しておらず、血のにおいが里中に充満していた。
(獣に襲われました、言う感じやな)
 足元に横たわる、爪痕、噛み痕のある死体にクニスカは心中で祈りを捧げる。
(こっちは蛇かい……)
 身体が変な風に折れ曲がり、苦悶の表情を浮かべる死体をげんなりした表情で見ながら、あることに気がついて立ち止まった。

(ミュートスの里なのに、ミュートスがおれヘンがな……)

 里中に転がっている死体の数々は、すべて帝国兵の制服を着ているものばかりだった。
 ミュートスを探す意思を持って里を見てみるが、やはり【里の人間】の姿は見つからない。
 生きているミュートスも、死んでいるミュートスもである。
(帝国兵を殺ったンはキマイラやろ。で、ミュートスはどこに行ったンや?)
 変わり果てた姿になっているとはいえミュートス狩りの兵がいるということは、ここがミュートスの里であるからだ。
 死体は見つからなかったが、家の中や井戸端などで里の人間が惨殺された跡がそこかしこに残されていた。
 クニスカは、大きな血だまりの横に置き去られた血まみれの乳母車を複雑な表情で見た。
「まさか、赤ん坊まで殺したンちゃうやろな……」
 呟きながらも、その可能性が高いと思いながらやりきれないため息をつく。
 そして、乳母車を直視するのが辛かったのか、辛そうに目をそらした。

「ひいっ!?」

 目をそらした先に、バラバラ死体が転がっていた。

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