#207:帝都辺境、滅ぼされた隠れ里- ⅱ

 見るも無残に【解体】された死体を見て、さすがのクニスカも悲鳴を上げる。
(なんで、コイツだけこんなバラバラになってンねんな……)
 他はせいぜい首を飛ばされているだけなのに、といぶかしみながら【パーツ】を探す。
 そして、少し遠目のところに転がっていた顔を見つけて愕然とする。
「……ヤニス卿!? ヤニス卿やんか!」
 バラバラ死体になっているのが古くからの知人であることを知って、クニスカは腰から崩れ落ちそうになった。
 なんとか踏ん張って、無念と苦痛が相まった凄惨な表情を見る。
 クニスカと同じく古い家系の貴族であったが、地方の豪族上がりの貴族や成り上がりの新興貴族を見下すようなところがあった。
(……キマイラに向って、空気をよぉ読まんよなコトしたンやろなあ)
 年下だけども態度は大きく感じの悪いヤツだったことを思い出し、思わず渋面を作った。
 同時にアークやマックは勿論、クニスカと模擬戦をやっても全く刃が立たなかったことを思い出す。
 家柄を鼻にかけ、【田舎者】のクニスカや【孤児上がり】のマックのアドバイスは真面目に聞こうとはしなかった。
(……で、アークにはペコペコしてナ。分りやすい子やったワ)
 などと。
 せっかく時間をかけてヤニスのことを思い出したが、もはや旧交を温めることもできない。
(まあ、気ぃ悪いコやったけど……ここまで悲惨な死に方するコトもないやろ……)
 クニスカはなんとも複雑な表情で天を仰いだ。
 鬱蒼と茂った木々の隙間から、どんよりとした曇天が覗く。
 そのままのポーズでしばらく立っていたが、ややあって何やら決意した口調で独白した。
「このままっちうワケにもイカンなァ……」
 言いおいて、ゆっくりと里を見回す。
 里の中央に立っていたからか、三百六十度すべての方向に死体が転がっている有り様だ。
 クニスカはため息をつくと、転がっていた鋤を拝借して穴を掘り始めた。
 帝都へ戻すわけにはいかないので、亡くなったこの地にせめて埋葬してやろうというわけである。
「八人……かいな」
 げんなりとした口調で呟くと、あとは黙々と穴を掘り続けた。
 ふと、木々の向こうの空をみあげてはあっとため息に近い息を吐く。
(お父ちゃんも……ウチがこんなコトしてるとは思てへンやろな……)
 再び穴掘り作業に戻りながら、クニスカは帝都出発前に立ち寄った実家でのやりとりを思い出した。

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