#26:隠れ里

 ひっそりと、静まり返った里だった。
 人がいないわけではなく、それなりに歩いている。むしろメイミィたちが帰ってきた途端に建物の中から幾人か出てきさえした。
 だが……誰も一言もしゃべらず、遠巻きにメイミィたち――正確にはジンとテルプシコルを見ている感じだった。
(……歓迎されてない、よね?)
 メイミィの話が本当であれば、ジンにとって生まれ故郷であるはずのこの里だが。歓迎どころか、思いっきり迷惑そうな顔で見られている模様。
 ややあって、ジンの顔がメイミィと同じ顔だと言うことがわかったものか。静まりかえった里がざわめきはじめる。
 ――が、隣人と目配せしてひそひそ話しという感じで、依然として警戒されている様子なのは変わりがない。
 何とも言えない居心地の悪さと若干の寂しさを感じて複雑な表情になっているジンを見て
「ここ、あまりヨソの人が来ないから。気にしないでね」
 と、メイミィは少し苦笑気味に振り返った。
 それを聞いたジン……
(いや、ヨソの人とかじゃなくて生まれ故郷……)
 なんて、さらにトホホな表情になっちゃったが、まあ。メイミィはそんな兄の様子にはまるで頓着せず、里の奥にある少し大きめな家に向かって歩いて行く。
「……ただいまー」
 なんとなく控えめに、メイミィは家の前に立つアルコンに手をあげた。
 アルコンはジンを見てさすがに目を見開いて驚いた様子だったが、一拍の間を置いてふう、とため息を漏らして
「とりあえず、中に入りなさい」
 と、一同を手招きした。それに応えてはいは~い、とメイミィがまず中へ入った。
 一瞬ためらいの表情を見せたジンを、アルコンは頷いてうながす。
「おじゃまします……」
 と、テルプシコルを背負ったジンが扉をくぐり中に入ると、アルコンは即座に扉を閉めて鍵をかける。
 その後、里はしばらくざわついていたが。やがて不気味なほどに静まりかえったのだった。

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