#46:アルコン邸、玄関先(二)

 そうこうしているうちに、朝靄が晴れた。
 陽の光が差し込み、目を細めるアルコンに。テルプシコルは居住まいを正して向き直った。
「色々お世話になってしまい、お礼のしようも無い」
 そう言ってテルプシコル、深々と頭を下げる。
「くれぐれも御身大切に。いずれ、また」
「巫女様もな。気をつけて行かれよ」
 その後ろに立っていたジンはちょっと言葉を探した後で頭を下げる。
「父さんと母さんの話、聞けてうれしかったです。また……迷惑でなければ寄らせて下さい」
「迷惑なんてことがあるものか。また来なさい」
 はい、と。はにかんだように笑うジン。
 そして、その横からひょっこりと顔を出したメイミィ。
 少し照れくさそうに。ちょっとだけ申し訳なさそうに、アルコンの顔を見て言った。
「爺様も風邪とかひかないように。あと、あまり夜更かししないように」
 目を丸くした後で優しげに目を細めたアルコンはメイミィの頭に手を乗せて微笑んだ。
「わかった、気をつけよう。だから、メイミィも気をつけて行けよ」
 孫娘同然に育ててきたメイミィの、いつの間にか成長した姿を見てアルコンの目が潤む。
 何かを隠すように、うつむき加減にまばたきをしたメイミィは顔を上げると
「……じゃ、いってきますっ!」
 と、満面の笑顔で。深々とお辞儀をして、旅立ちの別れを告げた。

 そして、三人は荷物を持ち。街道へ向け歩き始めた。
 里の出口で身体ごとくるっと振り返り、メイミィはぶんぶんとアルコンに手を振った。
 テルプシコルとジンも最後に深々と頭を下げる。
 アルコンはそんな三人を大きく手を振って見送った。
 見えなくなるまで、見送った。

 その後。茂みと林と獣道を抜け、山を下って街道に出た一行。
 すうっと息を吸い込んで、テルプシコルは言う。
「では、西へ」
 その言葉に、ジンとメイミィはしっかりと頷いた。
「うん、わかった」
「よし、いこー!」
 そんなこんなで。端から見ると、子供3人の危なっかしい一行。
 まずは元気に、街道を西へと進んで行くのだった。

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