#65:ベルメト近郊、山中(五)

「一体何を了解したのだ、お主は!?」
 すかさず入れられるテルプシコルのツッコミに、マックは愉快げにワハハと笑った。
「まあ、お子様が細かいことを気にするな」
 小さい子供をあしらうようにマックに言われたテルプシコル、顔を真っ赤にして怒った。
「お子様とはなんだ! 私は十九歳だぞ!?」
 だから子供だけではないわ! とテルプシコルの大見得を受けて
「じゅうきゅう……?」
 と、マックの目が点になる。
 そして、そんなマックに、メイミィはうんうんと何か悟ったように頷いてみせた。
 そのメイミィのリアクションに、やおら得心顔になって
「お前さんも苦労するなあ、メイミィ」
 と、言い置いてマックは二カッと笑った。
 あははとお気楽に笑うメイミィ、うーんと苦笑するジン。
 そして、当のテルプシコルは
「どういう意味だ!?」
 と、大いに怒ったのだった。
 
 そして、思い出したようにかまどの方に歩いて行ったメイミィは、鍋の中をぐるぐるとかき混ぜ様子を見て満足げに頷いた。
「はい、パスタが茹で上がったよ! スープの中にパスタを入れると美味しいんだよ」
 と、マックの持つミネストローネの皿に、ザルにあげて塩コショウとオリーブオイルで軽く下ごしらえしたパスタを投入。よく絡めて食べてねと言われたマックは、言葉の通りしっかりと混ぜた後でパスタをひとくち食べて唸る。
「これァ、うまい!」
 実にもちもち感があって美味しいパスタである。塩コショウで下味をつけたのが効を奏したか、はじめからパスタソースだったかのようにミネストローネが良くなじんでいた。
「ぬるま湯に浸してからしっかり茹でると、美味しく出来るんだよ」
 そんなメイミィの言葉に逐一頷きながら、マックはどえらい量を食べ続ける。
 手鍋一杯のミネストローネとパスタ……普通に考えて二〜三人分の量を、ひとりで一気に食べ尽くしてしまいそうな勢いである。
 さらに、通常ならば三〜四人で切り分ける量のパンも平らげているときた。
 テルプシコルはそんなマックを見てため息をつくと、なんとなしに周りの森に目をやった。
「こういう所には人蔘がありそうな気がするな」
 北向きの日当たりの良くない斜面を見て、テルプシコルは目を細める。
 それを受けて、メイミィもうんうんと頷いた。
「さっきリコリスが生えてるの見たよ」
 メイミィの言葉を受けて、テルプシコルは荷物の中からカゴをとりだし
「……たった今、買い置きの食材が半減したからな。食費を稼いだ方がよかろう」
 と、少し芝居がかった風にため息をつく。
 そして、メイミィも苦笑気味に頷くと、所在なげに突っ立っていたジンに向き直る。
「じゃあ、ちょっとテルちゃんと薬草を摘んでくるから、ジン荷物番よろしくね」
 あと火の始末もね、と。メイミィはにっこりと笑ってみせた。
 ジン、言われてほぼ消えかけているかまどの薪の様子を見て、その次にかまどの前に座り込んで『うまいうまい』と、顔も上げずにひたすら食べているマックを見て苦笑を浮かべる。
 そして暗い森の中を、気がかりそうに眺めやり
「うん、二人とも気をつけてね」
 と、ジンは支度を調えた風のメイミィとテルプシコルに言った。
「大丈夫だ。すぐ戻るからな」
「じゃ、行ってくるね!」
 そして、少し心配げなジンにお気楽に手を振って、テルプシコルとメイミィは森の中へと入っていくのだった。

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