#78:森の中(十三)

 ——そして、十分弱。
 ぽこ、ぽこ、と。ゆっくりと泡が立つような感じで、弱火で煮込んだ鍋の中身をおたまですくい上げ味を見たマックだったが、満足したのかニヤっと笑った。
 そして、じっと様子をうかがっている腹ぺこな三人に向かって宣言する。

「……よっしゃ、完成!」

 やったー!、と両手を挙げて喜ぶメイミィ。
 少し前に炊きあがった米を手際よく皿に盛るジン。
 それをワクワクした風に見るテルプシコル。
 調理途中から漂う香りに刺激を受け、食欲の高まりは各人ピークに達している。 
 皿に盛られた熱々のごはんにたっぷりかけられた熱々のカレーは、たまらないシズル感に満ちていた。
 そして全員に皿が行き渡り、すべての支度が整った。
「よし、食うか!」
 マックのその言葉を待ちわびたように
「いただきまーす!」
「いただきます」
「では、ありがたくいただくぞ」
 と、おのおのが言いながら、マック謹製の野菜カレーを食べ始めた。
「……おいしい!」
 と。真っ先に感嘆の声を上げたのは、メイミィだった。
 ジンはうんうんと頷きながら、ものも言わずにぱくついている。
「うん、美味い。これは、食欲が湧くな」
 と、まんざらでもないのはテルプシコルである。
 肉が入っていない分サッパリとした味付けになったこのカレーは、テルプシコルの好みに実に良くマッチしており、無意識のうちに笑顔になっている。
 それをうれしそうに見たマック、思い出したかのようにテルプシコルに尋ねる。
「どうだ? ピーマン。気にならないだろ?」
 あ、と。そういえば、苦手食材満載の一皿だった事を、今更ながらに思い出したテルプシコルはちょっと意外そうに目を丸くする。
「確かに——普段は食感や苦みが嫌で、ついつい避けてしまっていたが……気がついたら、何も気にせずに食べていた」
 ピーマンもパプリカも小さめにカットして良く煮込んだのが効を奏したのか、ネガな部分はあまり気にならない感じになっており、テルプシコルはなるほど美味いなと上機嫌に頷いた。

 ——やっぱ、嫌いだったんだ。

 テルプシコルの言葉に、ジンは何となく苦笑したものの、特にツッコミは避けて、食事を続ける。
「キャベツってカレーと合うんだねえ」
 キャベツの甘さと、シャッキリ感——ジャガイモ・トマト・キャベツは煮込みすぎないよう最後の方に入れていた——が、スパイシーなカレーやトマトの酸味と実に良く合っていた。
 ジンは今まで食べたことも考えたことも無かった取り合わせに驚きながら、ぱくぱく食べていた。
「どうだ、うまいだろ? まだおかわりあるぞ」
 と。自分がおかわりしながらマックはジンに言う。
 そして、用心棒としての『報酬』を手にメイミィに向かってニカッと笑った。
「まあ、これからも色々作るからよ。期待しててくれ」
 メイミィは左手でカレー皿を持ち、右手のスプーンにジャガイモをすくいながら
「うん!たのしみ!」
 と、それはそれは満面の笑みをマックに見せたのだった。

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