第4章:帝国

#79:イリオン城大手門

 全滅したミュートス狩り部隊を埋葬した数日後、アークは帝都イリオンへ戻っていた。
 『帝都イリオン』は聖イリオン帝国の首都であり、大陸最大の都市である。
 小高い丘の頂上には、白亜の宮殿として名高いイリオン城がそびえ立っている。
 丘の途中に軍の詰め所、有力貴族の館などが建てられて、城の守りとなっていた。
 さらに、相当な高さの城壁がぐるりと丘の周りを取り囲み、衛兵も多く王城詰めの騎士も多い、まさに難攻不落の城塞であった。
 また、丘の麓には大きな市街地が広がり、数多くの人々が生活を営んでいた。
 その市街地こそが、万が一敵勢に攻め込まれたときに障壁となる典型的な城下町の体を為していたが、その規模たるや他の都市が並ぶべくも無い巨大なものであった。

 イリオンには帝国各地のみならず国外からも品物が集まり、交易の中心地として栄えるばかりではなく、文化の交流点として活気に満ちた営みを見せている。

 イリオン市街のメインストリートを抜け、一番大きな城門に歩み寄ったアークは胸の紋章が見えるようにマントを跳ね上げてから通行証を取り出し、槍を構えた番兵にかざした。
「遊撃隊隊長、アークトゥルスだ。ミュートス探索よりただいま帰参した」
 そして通行証と共に、グラブに刺繍された騎士の紋章——トリオンが見えるように拳を胸に当てる。
「はっ!」
 その番兵はアークの顔を見知っていたと見え、アークの名乗りが終わるか終わらないかのタイミングで槍を立てて頭を下げた。
「通行証を確認いたしました。ご無事でなによりでした」
 顔を上げた番兵は、門の方を振り返り
「開門!」
 と、鋭く命じる。
 命じられた兵は門を開けるべく鎖をたぐった。太い鎖が巻かれる重々しい音とともに、厚く大きな城門がゆっくりと開いていく。
 それを見ながら、アークは緊張の面持ちで脇に控えている番兵に問う。
「ゴート卿に報告があるが、館にいらっしゃるか?」
 尋ねられた番兵は確認しますと台帳をめくったが、背筋をピンと伸ばし
「門外へはお出になっていらっしゃらないようです。おそらくはお屋敷にいらっしゃるかと」
 と、ハキハキと答えた。
 そうか、ありがとうとアークが礼を述べたのと同時に

 ——ごおん。

 重い音と共に、門が開ききった。
 そして番屋から飛び出してきた番兵——城門には五人が詰めていた——全員が槍を捧げ持って、道の両脇に並ぶ。
 応対をしていた番兵が、深々とアークに頭を下げた。
「お待たせいたしました、アークトゥルス卿!」
「ありがとう」
 軽く手を上げ、アークは整列する番兵の前を通り抜け城内へと入っていく。
 表情は引き締まり、まっすぐに行く手を見据えていた。
 番兵達は黙礼して、その背中を見送ったのだった。

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