#8:街道から山道へ(二)

「……終わったぞ」
 アークはモンスターをのぞき込み、倒したのを確認してジンの方を振り返った。言われたジンはおそるおそるモンスターとアークの方へと近づいてくる。
「こんな街道沿いに……こんなモンスターが出るなんて」
 つんつん。
 そう言いながら、モンスターをつつくジン。その言葉にアークは頷く。
「まったくだ。このところ多くなったな」
 アークは荷物の中から無骨な形状の携帯シャベルを取り出した。そしてため息を一発ついて、あとは無言で道脇に穴を掘り始める。ジンも、適当な木ぎれを見つけて穴掘りを手伝う。
 深く掘った穴に横たえたモンスターを眺め、また動き出すんじゃないかと不安げなジンをよそに、アークは落ち着いた表情で摘んできた花を亡骸に供えた。
「——眠れ。安らかに」
 と、上から土をかけて黙祷を捧げると、二人はやや足早に先に進んだのだった。

 それからしばらくして街道から枝分かれしている小道に入り、森の中へと入る。
 地図を片手に、アークはすたすたと歩いて行く。几帳面なアークらしく、途中で地図をひっくり返したり眼前にかざしたりして念入りに行き先を確認していた。
(こんな、細い山道まで書いてあるのかな?)
 ふと気になって。ジンはなにやら考え込んでいるアークの後ろから地図をのぞき込んでみた。

 ——びっくりするくらい、簡単な……いや、適当な地図だった。

 線が数本。言葉が二、三言。よくわからない図形がいくつか。
 そもそも、これだけ歩いているのにペラ一枚だけ。
 子供の落書きと言っても普通に納得するような、ワイルドかつシンプルな地図。
(なんでこれで行き先がわかるんだろう?)
 疑問を感じたが、その疑問を口にして『いや、実は俺も——』とか言われても困るし、と口をつぐんだジンは黙ってアークの後をついて行くことにする。当のアークは別段疑問も迷いもない模様で、確信ありげに歩を進めていた。
 そして、いよいよ道が獣道と言っていい細さになり、人がひとりなんとか通れる位の険しい断崖絶壁沿いの道を抜けた。
 その後で森の小道を——小道と言っていいものか迷うくらいに頼りない道だったが——歩いていると、ジンはあることに気がついた。
「……水の匂い?」
 潮っぽさは感じないが、それでも感じる水辺の気配。アークも言われて匂いを確かめた。
「そうだな……」
 言いながら地図を見て、アークは満足そうに頷く。
 この期に及んで、なお件の地図が役に立っている風なのに軽い驚きと感動を覚えつつ、ジンはアークの後ろに続いた。
 そして不意に道が途切れ、細い小道の先は開けたような空間になっているのがわかり、アークはぎゅっと拳を握りしめて道の先へと歩いて行く。
「……あ」
 その後を続いたジンは思わず感嘆の声を漏らす。
 アークは、そんなジンに向かって微笑んだ。
「着いたぞ、ジン」
 道の先にあったのは——白く美しい神殿だった。
 二人は近づくことも忘れて、しばらく遠くから神殿を眺めていた。

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