#85:アークトゥルス邸 庭園

 それは、いかにも武人の屋敷といった風情の無骨でそれでいて重々しい雰囲気の館であった。
(変わりない、な……)
 三ヶ月しか空けていなかったが、それでもどことなく感じる懐かしさを楽しむようにアークは立ち止まって館を眺めた。
 庭の木々と館を外から四、五分眺めてから、アークはゆっくりと門をくぐる。
 石畳を靴が踏むジャリ、と言う音が小気味よく響いた。

「若様!?」

 その音で気がついたのだろう。
 庭の灌木を剪定していた中年のメイドが、すっ転ぶような勢いで庭の奥から走ってきた。
「お帰りなさいませ!」
 軽く息を切らせるメイドに、アークはいたわるような微笑みを向けた。
「慌てるな、レクサ」
 レクサはアークが生まれる時に、この館に臨時メイドとして雇われたメイドだった。
 お産の前後の手助けとして一、二年の約束で入り……アークが二十二歳になる今に至るまでずっと勤め上げている大ベテランだ。
 赤子の頃のアークのおむつを替えたりミルクを飲ませたりはもちろん、やんちゃ盛りの子供の頃には野山を駆け回るお供までしてくれた。メイドと言っても、アークにとっては家族のような存在であった。
「母上はお元気か?」
「はい、つつがなくお過ごしです」
 そうか、と。満足そうに頷いたあと、アークにしては珍しく悪戯な表情を見せた。
「レクサも元気か——と、聞いた方がいいかな?」
「見ての通りですよ、若様」
 わはは。
 右肩に荷物を担ぎ上げ、元気ハツラツに笑うレクサに先導され、アークは館の中へと入っていった。

公開 : (636文字)

ページトップ